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東京高等裁判所 昭和31年(行ナ)53号 決定 1957年3月18日

原告 山本千代太郎

被告 公正取引委員会

主文

本件を東京地方裁判所へ移送する。

理由

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第八五条、第七七条によれば、当裁判所が第一審として裁判権を有する事件は、公正取引委員会の審決に係る訴訟その他右第八五条第二号及び第三号所定の事件のみである。原告の当裁判所へ提出した別紙訴状の記載及び、昭和三十一年十二月二十六日付の準備書面の記載によれば、原告は本件が同条第一号に該当する事件として、当裁判所へ訴を提起したことは認めることができるが、その各記載によれば被告がなにも審決をなしていないことは明であつて、同条第一号記載の被告の審決に係る訴とはとうてい認めることができない。しかしながら、別紙訴状及び準備書面の記載の全趣旨からすれば、原告の真意は本訴を当裁判所のみの審判を受ける趣旨で提起する趣旨ではなく、裁判所の審判を受ける趣旨で提起したものであることを認めるに難くない。よつて、行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第三〇条によつて、本件を第一審裁判所として管轄する東京地方裁判所へ移送するを相当と認め、主文のように決定する。

(裁判官 安倍恕 藤江忠二郎 浜田潔夫 村松俊夫 浅沼武)

訴状

一、請求の趣旨

本訴を提起するに至つた事件に就いて公正取引委員会は原告の止むを得ない事情のための旧独禁法による不充分な且つ不適法な申告書に基いて昭和三十一年十一月十三日に行つた処理を十二月七日付けで通知して来ましたが、新法による訂正又は再提出を求めないで本件の主要部分をなしている法の解釈適用及び法の解釈適用による違反該当事実の認定を不充分に且つ不適法に処理した処理は無効でありますので、無効の異議の申立と新法による充分なる申告書の再提出による審判手続の開始を申請いたしましたが応じません、尚処理通知までの有効である期間中に追加補充をした申告書による部分は処理には含まれていないので尚更無効なる処理であります。公正取引委員会の法の解釈適用及び解釈適用による違反事実の認定が皮相浅薄で且つ法理に合はないものですが、それにもかかわらず審判及び審決を行ひませんので依つて公正取引委員会に申告いたしました事件に就いて公正取引委員会は原子力委員会の憲法第十四条第一項の違憲行為を含む独禁法違反該当行為に対する法の解釈適用によつて、正確なる事実の認定及び正しい審決のためにする法の解釈適用に於ては、本訴で主張する憲法第九十九条の義務履行の請求を含む原則を以つて、最少限度の基準原則として審決を行つていなければならなかつたものとして、本訴に於て公正取引委員会に対して審決を義務づけて載くと共に当然その審決の原則は第一審に於ける判決の原則でもあるという、公正取引委員会が基準原則として審決を行つていなければならなかつた、原則確定のために裁判して戴くのが本訴の目的であります。

一、請求の原因

公正取引委員会は原告が申告いたしました事件としての、原子力委員会の独禁法違反該当行為は日米原子力協定という国内法に優先しない従つて独禁法上の事業者である原告を拘束しないで、原子力委員会を拘束する外交協定の下で、原子力委員会の所掌直営する原子力研究所に原子炉方法系列に属する研究をさせることは、それが研究という本来の研究であつても既に消極的な独禁法違反に該当する行為でありますのに更に幾多の違反になる目的行為を原子力基本法の欺罔解釈による不正当な行為として重ねて居ります、原子力委員会が原子力基本法の正当なる解釈に基かないで目的行為している違法な不当行為による独禁法違反に該当する行為及びその違反に該当する行為は同時に憲法第十四条第一項の違憲行為を含んでおりますのにもかかわらず、公正取引委員会は審判審決による原告の利益を与えません、従つて審決の結果によつて独禁法第七十七条による考慮後の訴の提起の利益もありません、依つて止むを得ずに本訴をするに至りました。

故に公正取引委員会は原告が本訴で主張する原則を以つて原子力委員会に対して、独禁法第二条第五項第六項解釈による第三条違反該当行為及第六条第二項違反該当行為の進行に対する、独禁法第七条のその他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置の基準原則として及び独禁法第二十五条の損害賠償の基準原則として審決を与えていなければならなかつたのは、原子力基本法に於ては法指定以外の同法の主要目的を本事業とする且つ原子力委員会が所掌管轄経営する責任のある原子力研究所と同一な研究目的を事業とする事業者に奨励措置をしなければならないものであるということを積極的な自明の理として解釈されなければならないのにそれ故に起る独禁法違反の基因を軽視して故意に措置を行つていない原子力委員会の原子力研究所を直轄経営する主要なる目的行為の大部分は、原子力基本法第七条の解釈を故意に欺罔して不正当に解釈することによつて目的行為をする不正当な行為による独禁法違反に該当する行為ですから、これを排除し正当な行為にするのには、独禁法及び原子力基本法の下に憲法第十四条第一項の違憲行為を重要な内容として含んで居りますので、違憲行為にならないようにする憲法第九十九条の義務履行をしなければなりません、それは原子力委員会が直接所掌経営している原子力研究所に原子力基本法第七条の正当なる本来の意味の原子力の開発に関する研究及び実験等に属すべきでない、外国で研究され実験された開発に関する科学技術及びそれ等を伴つた設備又はその資材や研究実験に使用する原料を一括購入して又は個々別々に購入して研究用という仮名目で只単に再試験的な熟練を行つて、これを国内の原子力の利用事業者に研究結果の科学技術又は科学技術権利として供給するという内外の肩替りをする、事実上の外国の原子力開発の研究及びその事業化の事業者又は該当者と独禁法違反に該当する契約等によつて、日本国内に対する事業化を欲する故に事業該当者と見做し得る事業者の授権代理人となつて、その研究事業に対し同時に、国内の原子力の利用事業者のなすべきである輸入及び試験又は附属原子力開発研究等に要する一切の負担に対して事実上の実質的奨励措置を行いつつあることを故意に欺罔して、正当な目的行為であるように進行させているのは積極的な独禁法違反及び積極的な違憲行為に該当いたしますので、原子炉方法による研究と称するものに支出している事実上の実質的な奨励措置と平等無差別に、原告である原子力開発研究及び研究結果の事業化を目的とする特例原子力開発研究専門事業に対しても奨励しなければならない筈になりますから、それは本件に関する独禁法違反該当行為に対する公共の利益上最少限度の違反を排除するのに必要な措置の基準原則であつて、同時に原告の請求することが出来る原子力委員会の独禁法違反該当行為による損害賠償の最少限度の基準原則になるということを原則として審判を行つていなければならなかつたものであるとして、民訴第二十一条及び第二百二十六条の訴及び請求権を含むところの審決を公正取引委員会に判決を以て義務付けて戴くことに係る訴訟原因であります。

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